5月19日

5月19日にオランダに飛ぶ飛行機を予約した。
3月19日に日本に一時帰国してから、2ヶ月ぶりにオランダに戻ることになる。

チケット発券のメールを受け取った途端、体内に溜まっていた澱のようなものがすっと消えてなくなり、身体が軽くなったような気がした。

いつになったらオランダに戻れるのかわからないという先の見えない心配や、戻れるとして日本に家族を残したままで行ってしまってよいものだろうかという罪悪感、自分の身近な生活空間だけでなく、世界全体で生活や人間関係の根本が覆ろうとしているのではないかという不安、そうした様々な感情が体内にどんよりと蓄積して、私の思考や行動を目に見えぬ形で制限していたように思う。

このままだらだらと続くように思えていた時間が、5月19日という日付を境に一度断ち切られるように感じられた。心配も罪悪感も不安もここで一旦切り捨てなければ、私はオランダに飛べないのだ。そんな感傷的な覚悟と同時に、日本の曖昧な自粛の空気から抜け出せるのだという喜びに身が震えた。身勝手なものである。

ヨーロッパでのコロナウィルスの深刻な影響はオランダも例外ではなかった。3月には感染者数や感染に伴う死者数が急増したことにより、ロックダウンが宣言され、生活必需品を扱う商店以外は休業となり、学校はオンラインでの授業が行われ、企業は在宅勤務が主となった。

日本がヨーロッパからの渡航を禁止する二日前に滑り込むようにして東京に戻ってきた私には、戸外で春の到来を楽しむ東京の人々の様子を見るにつけ、オランダの思い切った措置は少々行き過ぎなのではないかと思ったものである。

しかしながら、オランダのICU患者や死者は3月末から着実に減り続けており、昨日の新聞報道によると、コロナウィルスではない患者のICU受け入れがまもなく再開されるそうである。

周りの人たちの様子を伺いつつ曖昧な自粛を続ける日本と、思い切ったロックダウンによって感染の封じ込めがなされつつある合理主義のオランダ。

日本もオランダもコロナ以前の社会には戻れない。そう考える時、どれだけの他者にどれほど寛容になれるのかが、コロナ以後の自分の行動や思考の指針になるような気がしている。きっとオランダで外国人(他者)として生活する中で、私はその指針を何度も思い返すことだろう。

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