ポンコツ

オランダに早晩戻れるのではないかという期待が高まっている。そうなると、日本でしか堪能できないものやことを味わっておきたいという浅ましい気持ちがむくむくと湧き上がる。
そういった感傷に引きずられて、山梨のドメーヌ・ポンコツのまどぎわを開ける。
日本にいても行き場のない思いを、ふつふつと立ち上がる柔らかな泡と酸が受け止めてくれる。さすが、「ポンコツ」。さすが、「まどぎわ」である。そんな優しい味わいに包まれていると、果たしてオランダに帰ったとて、何があるというのだろうと自問しはじめ、不安の波に飲み込まれそうになる。
ふとドメーヌ・ポンコツのワインをオランダに連れ帰ったならば、しばしの心の支えにできるのかもとも思いつく。だけれど、この淡い酸はオランダの乾いた空気や湿気のフィルターを通さずに差し込んでくる陽の光の中では、弱くヘタれた味わいとして感じられるのではないかと思う。
そうなのだ。だからこそ、オランダに戻らねばと思うのだ。早く戻りたいと。日本のワインに癒される気持ちになりながらも、それだけでは満たされない強欲な自分を肯定するために。とりとめのないいくつかの自分を承認するために。まだ自分の知らない無数の他者に出会うために。そして、自分のちっぽけな価値観や前提を圧倒する他者と交わるために。
ボトルの隣には、館山の西山光太 陶芸家 西山光太​さんの器に南房総の花を活けました。

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